1992/02/17

短編 "1955" とアリス・ウォーカーにおける白人観:おわりに


おわりに

 この卒業論文で示したウォーカーの白人性の指摘は、一見してウォーカーのネガティブなイメージを強調していると思われるかもしれない。しかし、このウォーカーの白人性は、現在の流動的な世の中では至極当然なことであり、世界の人種、文化の交錯をも表していることから、決してそうとは言い切れないのだ。この論文を書いている「私」もまた幼少の時期をアフリカで過ごし、思春期をアメリカで過ごしたことで常に異種の文化の交錯を自分の中に感じている「クレオール」である。よって、この作品中のオーバーラップするウォーカーの白人的クレオール性とその「白人対黒人」で割り切れない人種の交錯するクレオール性をもつ粗筋とのパラレルな二重構造に、執筆中の「私」を加えて考えれば「クレオール」の三重構造が見えてくるのだと最後に付け加えておきたい。
 ここでどうしても申し上げたいことは、ゼミの指導教授である巽孝之先生の温かいご指導に対する心からの感謝の気持ちである。多くの文献を読むチャンス、そしてこの論文のヒント、そして素晴らしいゼミの仲間に出会う機会を与えて下さり、充実した学生生活の思い出を与えてくださったことに厚く御礼を申し上げたい。

1993年 1月8日
中村 美緒



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